優等生の恋愛事情
午後の英会話が終わると、部活がある瀬野ちゃんとわかれて、澤君と私は一緒に学校を出た。


「溝ちゃん、これからデート?」

「ええっ」

「違う?」

「違わないけど……でも、なんで???」

「いや、なんとなく?」

「なんとなくって……」


三谷くんと約束があること、学校では絶対に言ってなかったはずだけど。


「あの、ひょっとして顔に出てた……?」

「あー、違う違う。俺もこれから彼女と約束あって。だからホントなんとなく。溝ちゃんもかなぁって思っただけ」

「そっか」

「瀬野ちゃんは“聞いて聞いて!今日デートなの!”ってパワー全開でくるけど、溝ちゃんは言わねえのな」

「まあ、そうだね」


別に隠してるとかじゃないけど。

もし聞かれたら、普通に答えていただろうし。

でも、恋バナってちょっと……。

嫌とかじゃないけど、なんかまだ慣れないっていうか。

みんなはどんな恋愛してるのかなって、興味がないわけじゃないのにな。


「溝ちゃんさ」

「ん?」

「瀬野ちゃんが言ってたこと気にしてる?」

「えっ、と……」

「名前呼びの話」


澤君って、やっぱり私の思考が読めるわけ?


「それもなんとなくわかったの?」

「そうそう。で、どうよ?」

「そうなんだよねぇ」


私は思わずため息まじりに肩を落とした。


「溝ちゃんはどのへんが引っかかるわけ?」

「うーん、あのね」


思い切って澤君に聞いてみた。


「澤君も彼女さんのこと呼び捨てで呼びたいって思ってたの? できれば自分も呼び捨てで呼んで欲しいって思ってる?」


瀬野ちゃんは、女のコみんなの憧れみたいに言ってたけど。

男の子たちだって、自分の彼女のことは呼び捨てで呼びたいに決まってるって。

でも……。


「溝ちゃん、瀬野ちゃんの言うこと真に受けすぎ」

「で、でも」

「俺は別にカレカノになったからには呼び捨てにしたい!みたいな願望はないかな」

「呼び捨てにされたい願望も?」

「俺、基本的に彼女が呼びたいように呼んでくれればOKってスタンスよ?」

「そうなの?」

「そう。そりゃあいつまでも名字ってのは他人行儀な感じするし、できれば下の名前がいいけど。でも、彼女があえて名字でって望むなら、それはそれでアリだと思うし」

「そういうもの?」

「要はお互いにどうしたいか、じゃねえの?」


(お互いに、どうしたいか……)

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