優等生の恋愛事情
僕はちょっと恨めしそうにロクちゃんを見た。


「何を根拠に言ってるんだよ」

「見てればわかるだろ。でもまあ、溝口さんは自覚ないだろうな、きっと」

「え?」


(彼女が僕のことを好き……でも、自覚がない???)


「溝口さんって諒と同じ委員長体質だったろ?責任感強くて人に甘えるのが下手なタイプ」

「それはまあ……」


ロクちゃんが彼女のことをよくわかっていることに、ちょっとモヤッとする。けど、言ってることはそのとおり。当たってる。


「それでもさ、諒にはけっこう頼ってたじゃん」

「そう言われれば…………わりと……うん」

「ただ、溝口さんは勘違いしてそうだよな。諒のこと、同志みたいに思ってたりして?」

「うぅ、なんだよそれ」


(けど、僕だって……)


卒業して、別々の学校へ行って、会えなくなってようやく気がついたんだ。僕にとって彼女がどれだけ特別な存在だったのか。


無知で鈍感な僕は今になってようやく知ったんだ。彼女へのこの気持ちが何者かということを。この想いの正体を――。


「諒ってみんなに親切で博愛主義っぽい感じあったからなぁ」

「そんなことないと思うけど」

「あるある。そんなことあるある」

「うーん」


正直、言われてもピンとこない。僕自身は普通のつもりだったから。


「だからさ、溝口さん的には優しくされても大勢の中の一人と思っちまっても仕方ないって」

「そんなっ」

「あーらら、ミタニン八方美人」

「黙ってろよ」

「ミタニン、怖~い」

「こーら、四条は茶化すな」

「へいへい」
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