優等生の恋愛事情
私はもう嬉しくって舞い上がってしまった。

だって、写真で見たことしかなかった真綾さんに会えたんだもん。

それに、真綾さんの表情から伝わってきたから。

澤君がいつも私のことをどんなふうに話してくれているのか。

彼女である真綾さんが、他校にいる彼氏の女友達である私をどんなふうに思っているか。

真綾さんが快く思っていてくれたことが、なんだかとっても嬉しかった。

それって、私も他校恋愛しているせい?

例えば、諒くんが澤君のことを「いい奴だね」って思ってくれたら嬉しいもの。

だからきっと、同じように。


「桜野の文化祭、絶対行くので!」

「あ、ありがとうございます!楽しみに待ってます!」


真綾さんと私が夢中になって話していると、澤君がニコニコしながら言った。


「俺、真綾と溝ちゃんがふたりで写ってる写真欲しいなー。浴衣JK写真!」


(澤君、いきなり何をっっ)


「航ちゃん、それいい!私も欲しい!」

「あいあい」

「じゃあ、僕も」

「りょ、諒くん!?」


そうして、しばし撮影会。

もちろん、往来する人たちの邪魔にならないところに移動した。

真綾さんはすらりと背が高くて、ショートボブが似合うさっぱりとした雰囲気。

水色や薄紫色の紫陽花柄の浴衣は清楚で爽やかで、真綾さんにぴったり。

とってもきれいな真綾さんに気後れしながら隣に並ぶと、諒くんがいつものように優しい瞳で私を見てた。

諒くんが私に小さく手を振る。

ニコニコしながら「ちゃんと見てるよ」「ここにいるよ」って言ってるみたいに。

なんだかもう、それだけ胸がいっぱいになって、私は困ったように微笑みながら大きく頷いた。

嬉しいけど、恥ずかしい。

恥ずかしいけど、嬉しい。


(私、どんな表情でおさまったんだろう?)


楽しみだけど心配。

心配だけど楽しみ。


「あいよ!二人とも超可愛く撮れてるぜ」

「本当にね。素材がいいから難なくきれいに撮れたよ」

「そうそう」


諒くんも澤君も本当に臆面もなく褒めるから、真綾さんも私も照れまくりだった。

もちろん、気持ちは嬉しいのだけど。
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