優等生の恋愛事情
「じゃあ次は、航ちゃんと溝ちゃんさんの彼氏さんの浴衣男子写真だね!」

「おおともよ!」


楽しそうに請け合う澤君。

そして、諒くんもとっても楽しそう。


「よろしくね、聡美さん」

「うん!」


諒くんの大事なスマホをお預かり。

まあ、あとで共有すればって話もあるんだけど。

預けてくれたから、預かっちゃった。

澤君と同じくらい楽しそうな諒くんに、私の気持ちはがぜんはしゃいだ。

諒くんと澤君が並んでいる姿は、なんだかとっても不思議だった。

うまく言えないけど――諒くんと私って、いつも二人だけの閉じられた世界にいるみたいな、そういうとこがある。

他校だし? まして、夏休みだし?

それは嫌じゃないし、当たり前のことでもあるんだけど、なんていうか……。


「私、航ちゃんの高校の友達に会ったの初めてで。だからすごい嬉しいです」

「わ、私もっ。すごい嬉しいです」


真綾さんも私と同じ感覚なのかなって思った。

他校だと、同じ教室にいられないから。

ふたりの時間が始まるのは、放課後だから。

だから、こういう時間が余計に嬉しいんだ。

好きな人のことを、もっと知ることができたような。

好きな人に、自分のことをもっと知ってもらえたような。

二人の世界が、ちょっと深まって、ちょっと広がったような。

そんな気持ち。

とっても素敵に撮れた浴衣男子写真を見ながら、澤君は言った。


「溝ちゃんよ、三谷氏だけじゃなく俺のナイスな浴衣姿も遠慮なく自慢してくれたまえ」

「航ちゃん!」

「真綾が着せてくれたんだもーん」

「子どもか!」


怒りながら照れまくってる真綾さんが可愛すぎる。


(っていうか、着せてもらったって……)


いろいろ考えちゃうんだけど、とりあえずスルーしておいた……。


「溝ちゃんさ、三谷氏と撮ってやるよ」

「ええっ」


(そ、それは撮って欲しいけどっっ)


「じゃあ、僕らもふたりの写真を撮ってあげるってことで」


(諒くん!ありがとう!)
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