優等生の恋愛事情
そんなこんなで、私は真綾さんの、諒くんは澤君のスマホを預かった。


「じゃあ撮りまーす」


画面の中のカップルは、とってもお似合いで、とっても――仲良しだった。

さりげなく肩を抱き寄せる澤君と、呼応するみたいに、いっそう寄り添う真綾さん。


(な、なんかっ……)


ふたりがお似合いすぎて、すっごいらぶらぶで、私は勝手にドキドキしてた。


「じゃあ、次は溝ちゃんたちの番」

「う、うん」


(ど、どうしようっ……)


ドキドキが止まらないまま、諒くんの隣に並ぶことになっちゃった。


「溝ちゃーん、表情かたいぞー」


(ひぃぃぃ、澤君わざと指摘してる!?)


諒くんは私の気持ちを知ってか知らずか。


「写真ってなんか緊張するよね」

「そ、そうだね」


(私の事情はちょっと複雑なんだけど……)


さっきまで腕を組んでべったり甘えていたくせに、今は意識しすぎて近づけない。

でも……近づきたい、寄り添いたい。


「聡美さん」

「えっ」

「もっとくっついても平気?」

「う、うんっ」


私はぎこちなくだけど全力で頷いた。

すると――ふわりと手をつかまれた。

それから――。


(ああっ、この繋ぎ方って……)


握手みたいじゃなくって、互いの指を絡ませるようにして、私の右手は彼にしっかりと握られた。

ぎゅっと繋がる手と手。

ぐっと縮まるふたりの距離。

私たちは引かれ合うように寄り添った。


(諒くん、大好き)


「諒くん」

「うん?」


本当は声に出して言えたらいいのに。

でも、いっぱいいっぱいで言えなくて……。


「て、照れますにゃあ……」


(うわっ、にゃあってなんだ!私!)


でもでも、諒くんは優しいから。


「そうですにゃあ。照れますにゃあ」


(本当にもう、諒くんのことが大好きだよ)


もうね、心の中で何度も言って練習するから。

ちゃんと声に出して言えるように。

いつでも、どこでも、何度でも。


澤君と真綾さんのおかげで、宝物ができちゃった。

「この写真、溝ちゃんと三谷氏のほのぼの感が半端ないんだが」

「ふたりが可愛くておもしろかったから連写しておきました!」


(澤君も!真綾さんも!)

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