北向き納戸 間借り猫の亡霊 Ⅰ
「ややこしいですね、イントネーションがそのまんまで。あ、ひらがなで書くと、“し”をナナメにひっくりかえせば“つ”ですね。へー、おもしろい」
 また空が光って、凛乃はカミナリ探しに戻りながら、耳を累のほうに向ける。
「小野里さんが付けたんですか?」
「しるこのほうは、ばあちゃんがつけた」
「お汁粉が好きだったとか?」
「白猫だからじゃないかな」
「お汁粉のメインの色は、小豆色じゃないかと」
 累は考え込むように、一拍置いた。
「由来は特に聞いてない」
「えー、疑問に思わなかったんですか? 猫にお汁粉って」
「しるこの伯母と母親が白猫で“ネージュ”と “白玉”だったから、代々そういうつけかたなのかと思って」
「ネージュ……」
< 90 / 233 >

この作品をシェア

pagetop