TanKa

短歌、長歌、挽歌……?

騒ぎすぎて、回診の看護士さんに、何度か怒られはしたものの、僕たちはすぐに仲良くなった。

タケチも、見た目こそ怖ろしいけれど、話してみればこれがなかなか、雰囲気がある、というか、優しさもあるというか……。
とにかく、好青年だった、ということだ。

宇都木さんも、百人一首の最中は人格が変貌していたが、普段はやはり、大人しい美少女だ。

田中さんをはじめとする、数人のおじさんは、同室の患者さんで、みな、こういった遊びが好きらしい。
中でも、田中さんは、かなりの風流人と見える。
……あまり、百人一首を覚えていなかったけれど。

「おいらはねぇ、歌を作るのが大好きでさぁ……」
札を全て片付けてから、突然田中さんが言い出した。

「歌? どんな歌ですか」
僕と宇都木さんが、ハモるように声を重ねた。
お互い、顔を見合わせて、くすっと笑ってしまった。
< 21 / 31 >

この作品をシェア

pagetop