TanKa
「おうおぅ……! 始めてみるか、タケちゃんや……」
がしっとタケチの手をつかみ、瞳を潤ませて喜ぶ田中さん。
タケチは腕をつかまれ、少しだけうっとうしそうにしていたが、まんざらでもなさそうだった。
……彼は、おじいちゃんっ子なのかもしれないな。
と、余分なことばっか、考えてしまうな。
僕の、いつまでたっても、なおらないクセ。

「あんま、強く掴まないでくれ。……でも、短歌……自分でつくってみてぇんだ。入院して、何も楽しいことねぇとか思ってたけど、まさかの出現だったな……」
と言い、小倉百人一首の箱をポンポン、と軽くたたく。

短歌。
あの硬派でバンカラなタケチが、あろうことか、古臭い短歌。
「タケチ……本気なの?」
どさくさにまぎれて、ちゃっかりタケチと呼んで見せつつ、僕は彼の本音を聞こうとした。

タケチはさして反論もなく、「ああ、俺に嘘はねぇ」とかっこよすぎることを言ってのけた。
僕は、彼に強気な姿勢に圧倒されながらも、これで公けにタケチ、と呼べることに、胸を弾ませていた。
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