明日は明日の恋をする
日曜日の夜 ーー

「明日香ちゃん、迎えに来たよ。」

高瀬さんが迎えに来てくれた。私の荷物をヒョイっと持ち、進藤さんの元へ行く。

「頼んだぞ、ナオト。」

「まぁ、仕上がりに期待してな。」

私と高瀬さんはマンションを出て、外に停めてある車へ乗り込む。

高瀬さんのマンションに到着して、部屋の中に入る。

「ベッド1つしかないから、明日香ちゃんは俺の部屋使ってね。俺は隣の部屋で寝るから。」

高瀬さんの部屋に案内された。荷物を置くと飲み物持ってくると言って部屋を出る。私は落ち着かずにキョロキョロしていると、ふと本棚が目に入った。

秘書になる為の本や仕事に役立ちそうな本がたくさんある。勉強家なんだ、高瀬さん。棚の下の方を見ると、何故か営業に関する本がいくつもある。

「元々俺は営業一課に居たんだ。」

不思議そうに営業に関する本を見ていると、後ろから高瀬さんの声がした。そして持ってきたコーヒーをテーブルに置く。

「営業一課に?最初から進藤さんの秘書って訳じゃなかったんですね。」

「まぁね。新入社員として営業一課に配属されて、ガンガン契約取って一年後には営業一課のエースと呼ばれるようになったんだ。」

「へぇ、凄い。」

「でしょ?営業は天職だと思ったよ。そして同じく新入社員のケイスケも社長になる為の勉強として最初は色んな課に配属して経験値を積み上げてた。本当はこんなに早く社長に就任する予定はなかったけど、有栖川のお嬢様に気に入られちゃったからね、社長としての資質を求められて早々の社長就任。で、それまで社長だったケイスケの父親が会長になったんだけど…。」

「だけど?」

「ケイスケの父親…会長は息子(ケイスケ)に甘いからさ、早々の社長就任を心配して、俺が社長秘書をするようお願いされたんだ。無茶しないように見張っててくれって。」

「それで営業一課から秘書課に…。」

「営業でも秘書でも仕事を完璧にマスターしたい俺としては、必死に勉強したなぁ。おかげで本棚にみっちり本が埋まったよ。」

高瀬さんは本棚を懐かしそうに見て少し微笑む。必死に勉強した当時の事を思い出してるのかな。
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