明日は明日の恋をする
「ごめん、遅くなった。…えっと。」

仕事を終えた高瀬さんがようやくきた。早速ビールを注文し、テーブル席に向かい合って座っている私と真彩さんのどちらの隣に座ろうか悩んでいる。

「私が明日香の隣に移動しますから、どうぞ1人でこちらに座って下さい。」

真彩さんはスッと立ち上がって私の横に座った。

「ありがとう。それよりもう名前で呼びあってんだ?意気投合したんだね。あ、これ食べてもいい?」

「どうぞ。」

高瀬さんはテーブルに並んだ料理を食べながらグイッとビールを飲む。

「しまった。もう飲んじゃったけど…お疲れ様。」

半分くらいビールを飲んだ後に笑いながら乾杯をする。

「お疲れ様です…課長、何だか仕事中とは随分雰囲気が違いますね。」

真彩さんは仕事モードじゃない普段の高瀬さんを見て、少し驚いている様子だ。

「仕事が終わってまで課長でいたくないよ。仕事のイメージと違ってガッカリした?」

「いえ、全く。」

「あはは。鈴里さんは本当に俺に興味ないよね。」

ビールの入ったグラスが空になり、また3人分ビールを注文する。

「はい明日香ちゃんどうぞ。」

高瀬さんの前にビールが置かれ、新しくきたビールを私の前に置く。そして真彩さんにも渡した。

「…課長も名前呼びなんですね。やっぱり付き合ってるんじゃないんですか?」

「明日香ちゃんと知り合いなのは認めるけど、残念ながら付き合ってないって。俺ね、明日香ちゃんに振られてるの。」

高瀬さんはビールを飲みながら笑顔で話す。それを聞いた真彩さんは、本当なの?というような表情で私を見る。
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