明日は明日の恋をする
「まぁ、沢田課長良い人だもんね。俺も新入社員で営業一課に配属された時に課長にはお世話になったよ。いつから付き合ってるの?」

「あぁ、元営業一課でしたね。付き合いが始まったのは…私が新入社員の時だから、もう6年くらいになります。」

「長いね~。でも会いたい時に会えないとか寂しくないの?」

「グイグイ質問しますね。まぁいいですけど。付き合い始めくらいの時は寂しいと感じる事もありましたけど…今はないです。」

遠慮しないで質問攻めする俺も俺だけど、本当に顔色ひとつ変えずに全部答えてくれる鈴里さんは凄いと思う。

「へぇ、割とあっさりしてるんだね。」

「そうですね。それに…相性が良いんですよ、身体の。」

鈴里さんはニコッと微笑む。それを聞いて俺も笑みを返した。

「沢田課長って上手いんだ…それはプレッシャーだな。」

「何でプレッシャー?」

「だって俺、鈴里さんをお持ち帰りする予定だから。」

「…っ。」

俺の発言に、ビールを飲んでいた鈴里さんは思わず吹き出しそうになった。

「…本気で言ってるんですか?」

「うん、本気。」

語尾にハートをつけたような言い方で返事する。さて、鈴里さんはどんな反応をするか…ふざけないで、って言って帰っちゃうだろうか。それともスルーされるか…。

少し沈黙が続き、鈴里さんが口を開いた。

「明日香の…代わりですか?」

「明日香ちゃんは好きだけど代わりじゃないよ。ただ鈴里さんを抱きたいだけ。」

「心と身体は別って事?変な人…。いいですよ。条件さえ守ってくれれば…。」

意外だった。まさか持ち帰りOKが出るとは。鈴里さんは頬杖をついて挑発的な笑みを浮かべて俺を見る。

「条件って?」

「ちゃんと割り切ってくれるかしら?」

「一回抱いたくらいで彼氏ヅラするなって事?…OK、交渉成立だな。」

交渉が成立すると俺達は店を出てタクシーに乗り込む。
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