明日は明日の恋をする
「…ホントは離れたくないよ。夏の終わりには2人で花火を見たかったし、冬には綺麗なイルミネーションを見て一緒に感動したかった。クリスマスにはね、サプライズでプレゼントを用意したり苺がたくさん乗ってるケーキ食べたり…。そして一緒に年越しをして年が明けたらお参りに行っておみくじ引くの。色んな行事を過ごして、春になったら桜が綺麗だねって…全部…全部進藤さんと一緒にしたかった。」

私は涙が止まらないままずっと話し続けた。進藤さんも何も言わずにずっと話を聞いてくれた。

「幸せな時間がこのままずっと続けばいいのにっていつも思ってた。好きなんだもん。進藤さんの事が大好き…何で…何で婚約者なんているのよ。もっと早く進藤さんに出逢いたかった…。」

私は進藤さんの胸を借りて泣き叫ぶ。心の中の本音を全部進藤さんにぶつけ、ひたすら泣き続けた。それでも進藤さんは何も言わずにずっと私を抱きしめてくれた。

しばらく泣き続けると、私は少し落ち着きを取り戻し笑顔を見せる。

「えへへ、全部言っちゃった。ごめんね。」

「…そろそろ帰るか。」

「うん。」

それから私達はマンションへ帰った。車内ではあまり会話はせず、私は車の窓を開けて夜風を浴びながら外を眺めていた。

マンションに着くと、進藤さんはもう少し仕事をすると言って自分の部屋に入った。私は取り敢えずお風呂に入り、1人でいたくなかったので進藤さんの部屋に行く。

ーー コンコン

ノックをして少しだけドアを開ける。

「ねぇ、邪魔しないから部屋に入ってもいい?」

「あぁ。暇だったらこれ覚えててくれていいぞ。」

そう言ってファイルを渡された。中を見ると、恐らく会社の取引先と思われる情報が書かれている。

「明日香が秘書をする間に接する事になる取引先の情報だ。覚えてくれると助かる。」

「ふふ、分かりました。」

正直、別れ話の後だから重い空気になるかと思ったのにまさかの仕事話…。いつも通りの進藤さんに私は安心して、思わず笑ってしまった。
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