明日は明日の恋をする

「あっ明日香ちゃんもこんな状態だし、今日は家に泊まっていきな。」

俺は明日香ちゃんに毛布をかけながら鈴里さんに声をかける。

「でも、明日も仕事だし…。」

「仕事なんかいいよ。明日は有給にしとくから、明日香ちゃんの引越しを手伝ってあげて。明日の仕事の予定分かる？」

「はい。」

鈴里さんは鞄から手帳を取り出し、俺に見せてくれた。明日のスケジュールが綺麗な字で細かく書かれている。

「…このスケジュールなら何とか出来るから、明日は休みで決定。」

手帳を閉じて鈴里さんに返した。

「よし、今日はこれでお開きにして寝るか。鈴里さんどこで寝る？」

「明日香もいるしここでいいです。」

「そう？じゃあこっちに布団持ってくるね。」

そう言って俺は別の部屋へ布団を取りに行く。

「手伝います。」

鈴里さんもスクッと立ち上がり、俺の後をついてきた。

「参ったな。少しクールダウンしようと思ってたのに…。」

「えっ？」

酒に酔っていたせいもあり、俺の理性はギリギリだった。これ以上鈴里さんの近くにいたら、恐らく手を出してしまう。

俺は大きく深呼吸をして自分を抑える。

「ごめん、何でもない。この布団使って。」

警戒されないように笑顔を見せ、布団を渡した。そして俺は寝る為に自分の部屋に入る。

一応ベッドに横になるが寝れるはずもない。鈴里さんのいる方向に顔を向け、深いため息をつく。

「どれだけ欲求不満なんだ、俺は。」

そう、俺は欲求不満なんだ。酒を飲んだのもあり、鈴里さんに触れたいと思うのも全部そのせいなんだ。特別な感情なんて持ってない…自分に言い聞かせ、反対の方向を向く。

結局、殆ど眠れないまま朝を迎えた。

「おはよう。」

「おはようございます。」

リビングへ行くと明日香ちゃんと鈴里さんが楽しそうに会話をしていた。

「高瀬さんすみません。私、途中で寝ちゃったみたいで。」

「明日香ちゃんの睡魔は最強だもんね。」

「それは…否定できません。」

それは言わないでと言うような表情で俺を見る。

「じゃあ、俺は仕事行くから2人はここでゆっくりしていっていいからね。」

スーツに着替え仕事へ行く準備が終わると、鈴里さんに向けて鍵をポンっと投げた。

「それ家の合鍵。返すのはいつでもいいから。じゃあ行ってきます。」

「いってらっしゃい。」

2人に見送られて今日も元気に仕事に向かった。