明日は明日の恋をする
「それにしても、お前は説教されに社長室に来たのにコーヒー持ってくるように頼んだのか？」

「社長の好きな熱々コーヒーで少しでもご機嫌をとろうと思いまして。」

俺は仕事モードでニッコリ答える。

「調子のいい事を言いやがって。」

ケイスケは熱々のコーヒーを普通に飲む。熱くないのか…。

「それで社長、俺の処分はどうお考えですか？」

俺が質問したちょうどその時、社長室の電話が鳴り響く。

「ちょっと失礼…。」

ケイスケはソファーから立ち上がり、社長机に戻って電話に出る。


「なんか…社長と課長、いつもと雰囲気が違う気がする。」

鈴里さんが俺とケイスケを見てそう呟いた。

「あっ気づいた？実は俺と社長、学生時代からの親友なんだ。だから社長室ではいつもこんな感じ。これみんなには内緒ね。」

「親友…。」

そう呟いて鈴里さんはしばらく何かを考え込んだ。そして突然勢いよくソファーから立ち上がった。

「どうした？」

俺が鈴里さんに声をかけると、こっちを見て何かを言いたそうな顔をした。そしてまたストンと座る。

「あの、もしかして課長の親友で明日香の別れた彼氏って…。」

そう言って鈴里さんは電話中のケイスケの方を見る。

「あっ分かっちゃった？明日香ちゃんの元彼はアイツだよ。」

「やっぱり…でも社長って確か婚約者がいますよね？」

「いるよ。だけど2人とも惹かれ合い、別れがくるのを分かってても一緒にいる時間が欲しかったんだって。バカだよね。」

「悪かったな、バカで。」

電話を終えたケイスケがまたソファーに座る。俺たちの話を聞いていたみたいだ。

「ほら、マイ。明日香ちゃんと別れた悪い男が目の前にいるぞ。文句言ってやれ。」

「い、言えるわけないじゃない。それにマイって。」

「いいじゃん名前で呼んでも。仕事中じゃあるまいし。」

「勤務時間内のはずだが？」

俺と鈴里さんが言い合っていると、目の前にいるケイスケが怒りの営業スマイルで俺たちを見てくる。
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