明日は明日の恋をする
「責任を感じて退職を申し出たようだが、沢田課長は優秀な人材だ。俺の知り合いの会社に出向してもらうことにした。」

「そうですか。…あの、私の処分は?」

「鈴里さんはそのまま秘書課に残ってもらう。ただ、今後は社長専属秘書をお願いしたい。」

「私が社長専属秘書…でもそれってペナルティじゃなくて、むしろステップアップなのでは?」

「あぁ、言ってなかった。2人のペナルティは本日自宅謹慎、以上。」

「随分甘いペナルティだな。そんなんでいいのか?」

俺が言うと、ケイスケは何かを決意したような力強い目をして笑みを浮かべた。

「近々、計画を実行する。頼むな、ナオト。」

「計画?」

事情を飲み込めない鈴里さんはキョトンとした表情をする。俺はケイスケの考えている計画を鈴里さんにも話した。

「…そうですか。そういうことなら微力ながら協力致します。全て良い方向に向かうといいですね。」

ケイスケの意思が固まり、俺たちは笑みを浮かべる。

「取り敢えず、自宅謹慎の俺たちは大人しく帰りますか。」

「はい。」

俺と鈴里さんはソファーから立ち上がった。

「ちゃんと反省しろよ。」

ケイスケの言葉にはいはいっと返事を流し、2人で社長室を出た。

会社を出て2人で外を歩く。

「騒ぎに巻き込んじゃってごめん。」

「いえ、元は私のせいですし…こちらこそごめんなさい。」

俺はもう少し話をする為に近くの公園に誘い、2人でベンチに座った。

「頰…大丈夫?」

「はい。」

「良かった。」

そう言って空を見上げ、少し流れる雲を眺めた。

「なぁマイ、1度抱いたくらいで彼氏ヅラはしないけど…2度目からは彼氏ヅラしてもいい?」

隣に座る鈴里さんの顔を覗き込むように見て俺は微笑んだ。

「…考えとく。」

呆気にとられた表情をしつつ、鈴里さんも微笑み返す。

そしてこの日は、大人しく自宅謹慎をした。
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