明日は明日の恋をする
「緊張してる?」

貴島さんは口数が減った私を運転しながらチラッと見て少し笑う。

「緊張しますよ。もう爆発しそうです。」

「あはは、でも俺も今日は緊張してるなぁ。今から行くところはうちの会社と違って大きな会社だからね。しかも担当者が代わって初対面だし。」

「貴島さんでも緊張するんですね。」

緊張を顔や態度に見せない貴島さんは流石だなと思う。

「水沢さんにカッコ悪いところ見せらんないし、頑張らなきゃな。」

貴島さんと車内で会話して少し緊張がほぐれた頃、取引先へと到着した。

私は取引先のビルを見上げ呆然とする。見覚えのあるビル…進藤コーポレーションだ。

「取引先…ここですか?」

「そうだよ。さっ中に入ろうか。」

貴島さんの後に続いてビルの中に入る。懐かしの受付嬢のところで用件を話し、担当者が来るまで待つ。

「お待たせ致しました。」

担当の方が来ると、私は思わず『あっ!』と声を上げた。

「どうしたの?」

私の声に驚いた貴島さんが小声で話しかけてくる。

「あれ?水沢さんじゃないですか。」

「ご無沙汰しております…高瀬さん。」

取引先の担当者って高瀬さんだったのか。凄い偶然…私は微妙に視線を逸らし挨拶をした。

「水沢さん、知り合い?」

「は、はい。」

「申し遅れました。前担当より引き継いで担当させて頂くことになりました高瀬と申します。」

そう言うと、満面の営業スマイルで私と貴島さんに名刺を渡す。私達も高瀬さんに名刺を渡した。

「水沢さんとはこの会社で一緒に仕事をした事がありまして…それではこちらでお話しましょう。」

高瀬さんに案内され応接室へ向かう。歩いている途中、貴島さんが小声で話しかけてきた。

「水沢さん、ここで仕事してたの?」

「はい。あっでも、派遣で2週間くらいしか仕事してないですから。」

「それでも凄いよ。心強いなぁ。」

貴島さんは私を見てニコッとする。

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