明日は明日の恋をする
「ちょっと待てよ。」

「離して。」

この場を離れようとする私の腕をしっかり掴んできた。

「せっかく会ったんだ。少し話をしようぜ。」

そう言うと、私の腕を引っ張りながら強引に歩き始めた。

「嫌、離してよ。話すことなんか何もないから。」

「前はあんなに仲良くしたじゃないか 。何ならよりを戻してもいいんだぜ?」

「冗談言わないで。誰がアンタなんかと。」

相変わらず自己中心的な奴。前の私は何でこんな奴を好きになったんだろう。

「二度と明日香の前に現れるなと忠告したはずだが?」

えっ…この声は…

「し、進藤さん!?」

まさかと思って振り向くと、そこには進藤さんがいた。

何で進藤さんがここに?

進藤さんは私の腕から義雄の手を引き離し、自分の方へ引き寄せる。そして凄い形相で義雄を睨んでいる。

「て、てめぇはあの時の!?」

義雄も進藤さんの事を思い出したのかジリジリと後ずさる。

「さて…俺に殴られるか、さっさとこの場から立ち去るか、どっちを選ぶ?」

進藤さんは殴る準備をしながら義雄に近づく。どうしよう…止めた方がいいのかな。

「…チッ。」

義雄は舌打ちしながらそそくさと立ち去った。

「大丈夫か?」

「う、うん。でも何で進藤さんがここに?」

私が尋ねると、進藤さんはゆっくり私の前に来て私の手を取る。そして手に持っている私の携帯を取った。

「明日香は無事回収したから大丈夫だ。それと…。」

そうか。私、真彩さんとの電話を切らずにずっと通話中のままだったんだ。異変を感じた真彩さんが進藤さんに言ったのかな。

進藤さんは真彩さんと電話で何かを話し、それが終わると私に携帯を返してきた。

「ちょっと付き合え。」

進藤さんは私の返事を聞かずに歩き始める。仕事中なんだけどなぁと思いながらも私は進藤さんの後に続いた。

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