明日は明日の恋をする
この日は昼過ぎから会社の用事で外出していた。用事も終わり会社に戻ろうと歩いていると、私の横を見覚えのある黒のリムジンが通りかかった。そして私の前でハザードをつけて止まる。

「明日香さん、お久しぶりですわね。」

リムジンの窓が開き、中から美玲さんがニッコリと微笑みながら声をかけてきた。

「…お久しぶりです、美玲さん。」

私は精一杯笑顔を作る。

「ねぇ明日香さん。せっかくお会いした事ですし、少しお話ししませんか?」

「えっと…私今仕事中でして…。」

断ろうとしたが美玲さんの笑顔を見ていると何も言えなくなり、結局私は美玲さんの乗るリムジンに乗り込んだ。

高級なリムジンの中で美玲さんと2人で話なんてかなり緊張する。どうしよう。

「そういえば明日香さん、高瀬さんとお別れされたとか。」

「えっ?…あ、はい。実はそうなんです。」

突然の話にドキッとする。そういえば高瀬さんと付き合っている設定だったっけ。高瀬さんが別れた事にしたのかな。

「私ったら辛いお話をしてしまってごめんなさい。」

「気にしないで下さい。高瀬さんとは今でも良好な関係ですから。」

頭を下げて謝る美玲さんに、私は慌てて声をかける。

「明日香さんが羨ましいですわ。私も強くならないと…。」

「えっ?」

何故か切なそうに微笑む美玲さんに、私はなんて声をかけて良いか分からない。

「高瀬さんからお聞きになってないですか?私と進藤さんの事…。」

「い、いえ…何も。」

「…秋の始まりくらいだったかしら。実は私達、婚約解消しましたの。」

婚約解消って…。

その言葉を聞いた時、私の頭の中は真っ白になった。

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