明日は明日の恋をする
「何で…。」

「私から婚約解消を申し出ましたの…なんて本当は進藤さんにお願いして私から断った事にしてもらいました。振られたのは私の方です。」

美玲さんは一回目を閉じて微笑み、ゆっくりと目を開き話し始めた。

「私、知ってました。進藤さんは会社の為に私との婚約を断れなかったことを…。頑張ったんですけど、進藤さんの気持ちが私に向くことはありませんでした。」

私はただただ美玲さんの話を黙って聞く。

「この先、進藤さんと結婚の話を進めて良いものか悩んでいた時…初めて進藤さんが私に本音を教えてくれました。『想っている人がいる』ということを…。立場のある人ですから結婚の事、相当悩んだと思います。でも進藤さんは婚約解消を選んだ。相当大切に想う方なんでしょうね。」

私は話を聞きながら胸が苦しくなり泣きそうになっていた。

「婚約解消の代償…有栖川財閥との縁が切れた事で、進藤コーポレーションから撤退する取引先も数多くおります。会社経営も危なくなるかもしれません。ただ、進藤さんのような優秀な方がこのままフェードアウトするのは勿体ないと思いました。だからこの婚約は私の身勝手で解消したという事にして、進藤さんへの影響を最小限に留める事にしたのです。」

美玲さん、なんていい人なんだろう。本当に進藤さんの事好きだったんだろうな。

「まぁ私にとっても私からお断りしたっていう方が都合が良かったのもありますけどね。振られたとなると私の格が落ちてしまうので。」

美玲さんは可愛らしい笑顔を見せる。そして私の胸の苦しみはMAXを迎え、美玲さんに自分の気持ちを伝えた。

「美玲さん…私、本当は高瀬さんとお付き合いしてないんです。ずっと進藤さんの事が好きでした。ずっと…。ごめんなさい。」

美玲さんの顔を見るのが怖くて、私は下を向いたまま謝った。

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