明日は明日の恋をする
「好きだった…進藤さんへの想いは過去形ですか?」

そう聞かれ、私はパッと顔を上げる。美玲さんは力強い真っ直ぐな目で私を見ていた。

「今でも…好きです。何度も忘れようとしたけどまだ…。」

「明日香さん、私は権力だけで進藤さんを引き止めてましたからあなたを責めることはできません。ただ、悔しさはあります。そして安心感も…。」

「えっ…。」

「ふふ。進藤さんの想う人が気になってましたの。その方が明日香さんで良かったと思いました。私も明日香さんの事好きですから。」

私の目から我慢していた涙がスッと流れる。

「私、しばらく海外へ行くことにしました。今はまだ気持ちの整理がついてませんが…時が過ぎ、またいつか再会した時には友人として接しても良いですか?私、ずっと明日香さんと仲良くしたいと思ってましたの。」

「美玲さん…。」

色んな感情が混じり、私は涙が止まらなかった。そんな私を見て美玲さんはクスクス笑いながらハンカチを私の前に差し出す。

「今日は明日香さんにお会い出来て本当に良かった。そのハンカチ、私のお気に入りですの。次に会う時に返して下さいね。」

「はい。美玲さん…ありがとう。」

私はリムジンから降りて深々と頭を下げた。

よし、気持ちを切り替えなくちゃ。

私は涙を拭いてしっかりと前を向き、また仕事へと戻った。

< 192 / 197 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop