明日は明日の恋をする
「…はぁ。」

仕事が終わり家に帰ると、大きなため息をつく。今日も真彩さんは高瀬さんとデートらしく、私は静かな部屋に1人でいた。

もうすぐ進藤さんが迎えに来る。私は美玲さんと会った事を話すべきなのだろうか…とローテーブルに顔をつけ悩んでいた。

高瀬さんや真彩さんも婚約解消の事は知っていたはず。それでも私に教えなかったのは、きっと前を向いて進もうとしている私に気を使ったということかな。

なんか気が重い。婚約解消を知って何かを期待している自分がいるのがとても嫌だ。…何かあるならもうとっくにアクションがあっただろうけど今まで何もなかった。…それが答えなのに。

ピリリリリ…

ピリリリリ…

タイミングよく携帯が鳴る。進藤さんからだ。

「今外にいる。」

私は分かりましたと答えて部屋を出る。

「お待たせしました。」

私が助手席に乗ると、進藤さんは車を走らせた。そしてそのまま小洒落たレストランへ向かう。クリスマスでどこも予約でいっぱいだったけど、偶然キャンセルがあって飛び込みで予約が取れたらしい。

レストランでは豪華なコース料理が運ばれてくる。私はまだフォークとナイフに慣れなくて若干ぎこちない食べ方になってしまった。

「この後、少し家で話しないか?」

コース料理を食べ終わる頃、進藤さんは唐突にそう言った。私は『はい』と言って小さく頷く。

そして食事が終わると車に乗って進藤さんのマンションへ向かった。

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