明日は明日の恋をする
「着きましたよ。」

とあるビルの地下にある駐車場に着き、私と男性は車から降りた。

「ここから先は関係者っぽく装って私について来て下さい。」

関係者っぽくと言われても、どうして良いのか分からない。

私はここの関係者・・

私はここの関係者・・

意味のない事だと分かっているが、自分に暗示をかけて関係者と思うようにした。そんな私を見て男性はクスッと笑う。私は心の中で暗示をかけてたつもりだったが、どうやら声に出ていたようだ。

・・・恥ずかしい。私は顔を赤く染め、少し俯き加減で男性の後について行った。

地下の駐車場を出て外へ行くと、男性はビルの自動ドアから中へ入った。私はビルの大きさに思わず見上げる。

「うわぁ・・。」

緊張しながらビルの中へ入ると、入った先にいる受付嬢の人の視線を感じたが、内心ドキドキしながら関係者を装い男性について行った。男性はそのままエレベーターのところまでスタスタと歩き、エレベーターへ乗り込んだ。私も後に続いて乗り込むと、男性はそのまま最上階のボタンを押す。

エレベーターが上に進むたびに私の中の緊張感が増していく。この先には社長がいる。こんな大きなビルの会社社長という立場からもとても忙しい方のはず・・。それなのに、何故わざわざ私に会うというのだろう。あの夜の事がそれほど気に障ったのだろうか。

心の中が整理されないままエレベーターは最上階へ到着した。エレベーターを降りると、シーンとしたフロア全体に感じた事のない威圧的な空気感が広がっている。

「こちらへどうぞ。」

男性に案内され、社長室のドアの前にやってきた。

…コンコン

「失礼します。」

そう言うと男性はドアを開けた。

ドアを開けると、ほんのりと高級感溢れる香水のような香りがした。横を見ると、来客用のソファとテーブルがある。その反対側には数々の賞状やトロフィー、写真などが飾られている棚があり、ゆっくり視線を正面に向けると、椅子に座る1人の男性・・あの夜の社長がいた。
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