明日は明日の恋をする
「お腹空いたね。何か食べようか。」

「そうだね。それより…手…。」

映画の後、私達の手はまだ恋人繋ぎのままだった。高瀬さんは手を離す気配はないみたい。

「繋いだままじゃダメ?」

「良いけど…。」

甘えるような表情を見せる高瀬さん。私は思わず手を繋ぐのをOKした。

それから食事をして夜までドライブデートを楽しんだ。少し遠出をして海沿いに車を停めて海を眺めたり、適当に車を走らせながら面白そうな場所があれば寄ってみたり…。

夜になると、高瀬さんがぜひ行ってみたい場所があるということで車を走らせる。目的地は聞いても教えてくれなかった。

「ここから少し歩こう。」

車を降り、薄暗い夜道…というか坂道を手を繋いで歩く。どこに行くんだろう。

「着いた。」

「わぁ…凄い。」

着いた先は、綺麗な景色が一望できる高台だった。周りを見ると、他にもちらほら恋人達が景色を堪能している。

「ここ、夜のデートスポットで人気なんだって。夜景が綺麗だね。」

「ホントに綺麗…。ナオ君、デートスポットに詳しいんだね。」

「知識と情報は武器になるって言ったでしょ?まぁここに来たのは初めてだけど。」

私達は手を繋いだまま、しばらく夜景を眺めた。すると高瀬さんが私の肩を抱き、グイッと引き寄せた。

「今日は一日付き合ってくれてありがとう。楽しかった。」

「私も…今日は楽しかった。ありがとう。」

お互い顔を見合わせて何だか良い雰囲気になる。そして私は少し思った…このままキスされるかも…。

ところが、高瀬さんは抱いていた私の肩をパッと離した。そして私とは逆の方を向き、自分の前髪をわしゃわしゃし始める。

「ナオ君?」

「すっごくキスしたいけど我慢する。キスした後、理性を抑える自信がない。」

高瀬さんは自分の煩悩と戦っているようだ。

「よし、帰ろうか。」

「うん。」

「あ…でも最後に抱きしめてもいい?」

「えっと…うん。」

笑顔で聞いてくる高瀬さんに、私は照れたように小さな声で返事をした。

私の返事を確認すると、高瀬さんは優しく私を抱きしめる。周りに人がいるのも忘れて、私も高瀬さんに手を回しギュッとした。
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