明日は明日の恋をする

それから車でマンションまで送ってくれた。マンションの前に車を止めると、高瀬さんがボソッと呟く。

「このまま…ケイスケの元に帰したくないな。」

「え？」

私はその言葉がよく聞き取れず、聞き返そうと思って高瀬さんの方を向くと、顔が近づき高瀬さんの唇が触れた。

「ごめん。やっぱり我慢出来なかった。」

唇を離すと、高瀬さんは自分のおでこを私のおでこにコツンと当てて謝ってきた。

「じゃあおやすみ。」

「…おやすみなさい。」

私は車を降りて運転席の前に立つ。すると車の窓が開いて高瀬さんが顔を出した。

「ねぇ、明日からも明日香ちゃんって呼んでいい？」

「はい、良いですよ。」

私が笑顔で返事すると高瀬さんは手を振りながら車を走らせた。私も手を振りながら車を見送る。車が見えなくなるとマンションの中へ入った。

進藤さんは帰って来てるかな…。

私はそうッと玄関のドアを開けた。玄関には進藤さんの靴がある。帰って来ていた。

「ただいま～。」

私は物凄く小さな声で言うと、そのままリビングへ行く。リビングは電気がついていて、ソファーに進藤さんが座っていた。

「…今までナオトと一緒だったのか？」

「あ…はい。」

気のせいか、進藤さんになんか睨まれてる気がする。

「ナオトとはいつから付き合ってるんだ？」

「えぇ？高瀬さんとは付き合ってません。美術館での発言は、機転を利かせた高瀬さんの嘘ですよ。私もそれに合わせて彼女のフリしただけで…。」

私は何故か慌てて言い訳しているかのように説明する。

「…ちょっとソファーの前まで来い。」

何だろう。私はソファーに座っている進藤さんの前に行く。すると私は手をグイッと引かれ、進藤さんの膝の上に乗ってしまった。

「え…進藤さ…んっ。」

進藤さんの唇が私の首筋をなぞる。突然の事に思わず私の声が漏れそうになる。

次第に唇は激しく私の首筋に吸い付く。

そしてしばらくすると唇が離れ、進藤さんは立ち上がり私を見てニィッと笑みを浮かべる。

「明日が楽しみだな。」

謎のセリフを残して、進藤さんは自分の部屋に戻って行った。

「何！？何だったの？…もしかしてただの嫌がらせ！？」