明日は明日の恋をする
「社長、水沢 明日香さんをお連れ致しました。それでは失礼します。」

男性は頭を下げて部屋を出ていった。社長室に残された私は頭が真っ白になりただただ不安感しかない。

椅子に座っていた社長がスッと立ち上がり、私の元へ近づいてくる。目の前で見ると、完璧に整った顔立ちにモデル体型の高身長、一言で言うならイケメンだ。

あの夜の私は仕事モードだったから社長に楽しんでもらう事しか考えてなく、特に外見は気にしてなかったが、こんなイケメンを前に今なら他のホステス達が妬んだのも分かる気がする。

「るな・・いや、水沢さんって呼んだ方が良いのかな?こちらのソファへどうぞ。」

社長は優しい口調で言う。私に罵倒を浴びせるために社長室へ呼んだ訳じゃないのだろうか?でも、私の目的はきちんとお詫びをすること・・。ソファに座る前に私は深々と頭を下げて謝った。

「先日は大変失礼致しました。申し訳ございません。」

「私は気にしてませんから、頭を上げて下さい。取り敢えず座って話をしましょう。」

この社長、顔だけじゃなく性格も良いだなんて。社長の優しさと器の大きさに目頭が熱くなり涙が出そうになる。私はすみませんと言いながらソファに腰掛けた。

…コンコン

「失礼します。」

さっきの男性が入ってきた。社長の前に紅茶を、そして私の前に紅茶とカラフルで可愛いマカロンを置いてまた部屋から出ていった。

「召し上がって下さい。」

社長はニッコリして紅茶を一口飲む。私もお言葉に甘えて可愛いマカロンを手に取りパクッと口に入れた。

「美味しい。」

「でしょう?このビルの近くにマカロンの美味しい店があるんですよ。」

「へぇ。」

私はもう一つマカロンを手に取り頬張った。社長はニッコリしながらマカロンを食べる私を見ている。
< 6 / 197 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop