明日は明日の恋をする
会社、社長室にて(高瀬目線)ーー

「失礼します。社長、お呼びでしょうか?」

秘書課で仕事をしていると社長室から呼び出しがあり、急いでケイスケのいる社長室へ向かった。

社長室へ入ると、ケイスケの婚約者の有栖川財閥のお嬢様が来ていた。

「これは美玲さん、いらしてたのですか?失礼しました。すぐにお茶をお持ちします。」

「あら、すぐに帰りますのでお気遣いなさらないで。それより高瀬さんにお聞きしたい事がありますの。」

聞きたい事?

状況が掴めないままだが、取り敢えずケイスケと美玲さんのいるソファーの前へ行く。

「お聞きしたい事って何でしょう?」

「実は進藤さんと一緒にお出かけしようと思ってるのですが、何処かおススメの場所などご存知ではないでしょうか?」

「……はぁ?」

想定外の質問に、俺は思わず仕事モードが崩れそうになる。すかさずケイスケが咳払いをして営業スマイルで俺を見てきた。まるで『空気を読め』と言わんばかりの笑顔だ。

ケイスケのその笑顔の圧力に、俺も同じく営業スマイルで返す。『この状況を説明しろよ』と無言の笑顔でケイスケに訴えた。

美玲さんは俺とケイスケの無言のやりとりには気付かず、ニコニコしながら俺の答えを待っている。

「…有栖川会長が所有している軽井沢の別荘に行く予定だったんだが、別荘の近くで空き巣が多発しているらしくて、危ないからと会長からNGが出たんだ。」

俺の心の声が通じたのか、ケイスケは状況を説明し始める。

「そうなんですの。それではプライベートビーチの方へとお誘いしたのですが、プライベートビーチ付近の海には今年はサメがいるとの事で…。」

「…それは物騒ですね。」

「えぇ、ですから困ってしまいまして…。そしたら進藤さんが、高瀬さんでしたら色々お詳しいからおススメの場所をご存知だとおっしゃってましたので、では聞いてみましょう、と高瀬さんをお呼びしましたの。」
< 61 / 197 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop