明日は明日の恋をする
「そういう事情でしたか。」

俺は表面上は笑顔を見せる…が、この仕事が忙しい時にどうでもいい事で呼び出しやがって~とケイスケの方を見て目で訴える。

「高瀬、何処か良い場所を知らないか?安全で美玲さんが楽しめるような場所が良いんだが…。」

ケイスケは俺の視線を無視して笑顔で聞いてくる。そもそも安全で楽しめる場所って何だよ。無茶振りしやがって…。

「…社長とご一緒なら何処でも安全なのでは?何があっても守って下さいますよ。」

俺は嫌味たっぷりにケイスケの質問に答える。仕事は残ってるし、何より面倒くさい。俺は早く社長室から出て行きたかった。

「確かに進藤さんと一緒なら何処でも安全ですわね。…そうですわ、行き先は海にしましょうか?有栖川財閥の経営しているリゾートホテルの側に、評判の良い海水浴場がありますの。」

「海、良いじゃないですか。羨ましいです。」

上手い具合に行き先も決まった事だし、このチャンスにさっさと社長室から出ようとした。

「良かったら高瀬さんもご一緒にいかがです?彼女の明日香さんと一緒に…。」

「いえいえ、とんでもないです。デートの邪魔など出来ません。お二人で楽しんできて下さい。」

まさかのお誘い。

俺は笑顔を見せつつ全力で断る。誘った美玲さんは寂しそうな表情になった。そして感じるケイスケの視線…『お嬢様の機嫌を損ねるな』と言っている。

「全然邪魔じゃないよ、高瀬。気は使わなくていいから、たまにはプライベートにも付き合ってくれないか。」

「…社長と美玲さんがそう言って下さるのなら、喜んでご一緒させてもらいます。あ、でも明日香ちゃんの都合も聞かないといけないので、返事は後日でもよろしいですか?」

寂しそうにしていた美玲さんの表情がパァっと明るくなる。

「えぇ、良い返事をお待ちしてますわ。」

「はい。では仕事に戻ります。」

俺は2人に頭を下げて、ようやく社長室から解放された。
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