明日は明日の恋をする
「…というわけなんだ。ごめん、明日香ちゃん。巻き込んじゃって…。」

話終わった高瀬さんは、手を合わせごめんと謝ってきた。

「あ、でも明日香ちゃんが行けないって事にして断ればいいのか。」

「お嬢様を甘く見るな。その時はナオトだけ連れて行かれるぞ。俺とお嬢様とお前の3人だ。」

「ちょっマジか。それはもっと嫌だ。何が悲しくて休みの日にまで仕事モードでいなきゃいけないんだよ。」

「諦めろ。それで、水沢はどうする?」

テンションだだ落ちの高瀬さんをよそに、進藤さんは私に聞いてきた。

「私は…。」

何てタイムリーなんでしょう。さっきまで読んでいた雑誌に海特集があって楽しそうだなって思っていたところだった。

「私は、行ってみたいな…海。」

「決まりだな。」

こうして私達は海へ行く事になった。

「お前らの気が変わらないうちにお嬢様に連絡してくる。」

進藤さんは自分の部屋へ行く。私は食事の後片付けをして、食後のコーヒーを入れた。

「どうぞ。」

「ありがとう。」

高瀬さんはコーヒーを口にする。

「でも本当に良かったの?また俺の彼女やらないといけないよ?」

「あはは。ボロが出ないように頑張ります。」

「何なら俺の本当の彼女になる?」

「…えっ?」

高瀬さんはニッコリと私を見る。本気か冗談か分からないまま返事に困っていると、進藤さんがリビングに戻ってきた。何だか疲れたような表情をしている。

「お嬢様に連絡してきた。日時は来週の土曜日の朝8時頃、このマンションの前までお嬢様が車で迎えに来てくれるそうだ。高瀬、遅れるなよ。」

「はいはい。」

「あと…海の後は有栖川リゾートホテルに一泊するそうだ。」

「一泊!?」

私と高瀬さんは声を揃えて驚く。進藤さんの表情からして進藤さんもあまり乗り気じゃないみたい。

「はぁ、分かったよ。じゃあ俺帰るわ。そういやさっきから気になってたんだけど、明日香ちゃん首の絆創膏どうしたの?」

「えっと…か、買い物から帰ってきたら虫に刺されちゃってたみたいで…。」

「 夏は気をつけなくちゃね。じゃあおやすみ。」

キスマークを隠してます…とは言えないし、上手く誤魔化せたかな。そして高瀬さんは帰っていった。

「へぇ、虫に刺されたのか。悪い虫もいるものだな。」

高瀬さんが帰った後、進藤さんが笑みを浮かべてそう言った。

「悪い虫って…進藤さんの事でしょ!」

私は口には出さず、進藤さんを睨みながら心の中で叫んだ。
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