明日は明日の恋をする
「…せっかくココから…進藤さんから離れる決心をしたのに…今そんな事言われたら私…。」

私は進藤さんを睨みつけるように見ながら、大きめの独り言を言う。そして進藤さんの前まで行き、私から強引にキスをした。

「…お酒の味。」

少しだけ唇を離し呟いた。

「いい酒を飲んできたから美味いだろ?」

進藤さんは強引にキスをした私に呆気を取られていたが、ニィっと笑みを浮かべ私の呟きに反応する。

「…んっ…美味しい。」

そして私はお酒の味を確認するかのようにしばらく唇を重ねた。

「明日からはまた…色んな責任(もの)を背負った進藤さんに戻るんですね。」

「あぁ。」

「私は…例えこの先別れなきゃいけない事が分かっていても、アナタが私を必要としてくれるのなら…少しでも側に居たいです……好きだから。」

やっと言えた本音。

本当は早く進藤さんから離れた方がいいのは分かっている。進藤さんには美玲さんという婚約者がいるし、何より一緒にいると無限に恋心が膨らんでいく。

それでも私は…私の事を好きと言ってくれた進藤さんとの時間が欲しかった。この先必ず訪れる別れがどんなに辛くとも……。

ふわっ

進藤さんが目の前にいる私をそっと抱きしめる。そして私の耳元で囁くように言った。

「俺は最低の男だ。明日香を幸せに出来ないのが分かってるのに…それでも側に居て欲しいと思っている。」

「最低なのはお互い様です。私も美玲さんがいるのが分かってるのに…側に居たいと思ってます。」

お互い顔を見合わせてクスッと笑う。

「想像以上に辛いぞ、多分。いいのか?」

「平気…じゃないかもしれませんが、今日が良ければ全て良し。明日の事は明日考えます。」

「ポジティブだな。」

笑顔でキスをして…始まりの鐘が鳴った。

『期間限定、秘密の恋人』

つくづく思う、自分の馬鹿さに。別れるのが分かってて付き合うなんて…。人を本気で好きになるって怖いかも。

でもこれが私の選んだ道だった。
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