明日は明日の恋をする
食事の用意が終わると、部屋着に着替えた進藤さんがリビングに来てテーブルにつく。そして何も言わずにあっという間に全部平らげた。本当にお腹が空いていたんだ。

「…何か飲みますか?」

「一緒にワイン飲むか?」

「はい…あっでも殴られたとこ大丈夫ですか?何だか痛々しいほど青あざになってますけど。」

「アルコール消毒になって丁度いい。」

「ふふ、何それ。じゃあ準備しますね。」

「いや、俺がする。」

そう言って進藤さんはグラスとワインを用意してソファー前のテーブルに置く。そしてワインを注いだ。

「ありがとうございます。」

私と進藤さんはソファーに座り、何も喋る事なく静かにワインを飲む。しばらく沈黙が続いた後、進藤さんが話を切り出した。

「…こんな事言うのも変な話だが、俺はお嬢様と一度たりともキスした事も、関係を持った事もない。」

「な、何で?婚約者なのに…。」

「そういう約束なんだ。結婚前に既成事実を作って有栖川財閥の後釜を狙おうとする奴もいるらしく、正式に結婚が決まるまでは婚約者であっても手を出すなと有栖川家から言われている。」

「でも、海に一泊した時に美玲さんの部屋のベッド付近で進藤さんの香水の香りが…。」

「そりゃ、お嬢様の荷物持って部屋に出入りしたからじゃないか?」

美玲さんと関係を持ってないと聞いてホッとする自分がいる。なんて私って嫌な奴なんだろう。

「俺らはお互いの事を知らな過ぎるかもな。…俺も聞いてみたい事がある。」

「何ですか?」

「明日香はいつから俺を意識し始めたんだ?」

まさかの質問。

いつから?そう言われると、いつから私は進藤さんの事気になり始めたのだろう。少し考えてから質問に答える。

「いつからでしょうね。気がついたら…好きになってました。進藤さんはいつから私を意識してくれたんですか?」

こんな事聞かれても進藤さん困るだろうな、と思いながらも気になるので質問返しをしてみた。
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