明日は明日の恋をする
「住み込みにしてくれたのは、同情からですか?」

「まぁあれは同情せざるを得なかったからな。1日であんなに不幸にあった奴を見たのは初めてだった。」

「あはは、自分でも何であんな目にあうのか信じられませんでした。」

あの不幸な1日を思い出し私は苦笑する。

「それに俺にとって居心地の良い空気感を出してくれると思った。嫌な言い方をすれば…ナオトに似てる部分があると感じたな。一緒に生活しても問題は起きないと思ったんだ。」

私が高瀬さんと似てる?自分では分からないが、多分褒め言葉だろう。

「…今日は色々話が聞けて良かったです。あの、最後に一つ…私の過去を話す前の話なんですけど、接待で酔って帰ってきて、私にキス…したの覚えてます?」

ずっと気になっていたあの日のことを聞いてみた。進藤さんは少し考え込み、思い出したのか話し始めた。

「…あの時の事か。仕事モードで帰ってきた日だろう?覚えているさ。」

「え…記憶に残ってたの?でも進藤さん、次の日とか全然普通にいつも通りでしたけど。」

「勢いでキスしてしまったから、次の日に謝ろうかと思ったけど、明日香も全然普通だったし、蒸し返さない方が良いかと…。」

「あの時、私めっちゃドキドキしてたんですよ。」

「それはすまなかった。今日は喋りすぎたな。俺はもう少し仕事をするから部屋に戻る。早く寝ろよ。」

そう言って隣に座る私にキスをする。そして立ち上がり、また部屋に戻っていった。

私はグラスに残っているワインをぐいっと飲みながら窓の外を眺める。

ねぇ…

キス以上の事を望んだらダメですか?
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