My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2
「結構だ」
ばっさりと言ったのは、いつの間にか私の真横に戻ってきていたセリーン。
その目は冷たく据わっていて、アルディートと名乗ったその人も一瞬驚いたように目を丸くした。
セリーンは行くぞと低く言い、ラグを抱えていない方の手で私の腕を引いた。
「え、でも宿を教えてくれるって……」
「そうそう、美味いと評判の食堂付き宿なんてどうですか?」
「結構だ。自分たちで探す」
少し後ろをついて来るアルディートさんにまたもきっぱりと言うセリーン。
小さなラグを抱きしめながらこんなに不機嫌そうなセリーンを見るのは初めてだった。
ちなみにラグは相変わらず下を向いたままだ。
(食堂付きなんて今探している宿にぴったりなのに)
でもちらりと見たアルディートさんは気分を害されたふうでもなく、寧ろ先ほどよりもなんだか楽しそうに後をついて来る。
「あ、じゃあさ、そのちびっこも楽しめそうな宿なんてどう?」
「誰がちびっこだ!!」
突然そう怒鳴ったのはラグ。でもすぐに、しまったという顔をして再び下を向いてしまった。