My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2
アルディートさんはそんなラグの態度にも特に気にする様子は無く、
「悪ぃ悪ぃ! もうお兄ちゃんだよなぁ。な、君もどうせなら楽しい宿の方がいいだろ?」
そうセリーンの横からラグの顔を覗きこみ笑顔で続けた。
しかしラグはもう何も言わず、ただじっと俯いている。
(ラグ?)
そこで私はやっとラグがおかしいことに気付いた。
よく見ると顔色が悪く、こんなに寒いのにその肌がうっすら汗ばんでいるように見える。
もしかしたら単に抵抗に疲れたからではなく、私と同じように具合が悪いのではと急に心配になった。
アルディートさんは更にラグに話しかける。
「ところで君はこの美人なお姉さんの弟くんかな? まさか子供ってことは……って、あれ? 君どっかで会ったことないか?」
「いい加減にしろ! 私たちだけでなくこの子にまで声をかけるとは、大の男が恥を知れ!!」
とうとう声を荒げ足を止めたセリーン。私から離れた手が剣の柄に掛かり慌てる。