My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2
セリーンが更に声を張り上げる。
「ストレッタの前にどこか街に降りてゆっくり休まないか」
その意見に私はうんうんと大きく頷いた。大賛成だ。
問題のストレッタに行く前に、今はとにかく早く暖かい場所で休みたかった。
出来る限り早く進みたいというラグの意向により、この5日間寝るとき以外はほとんど空の上。
それも、ちゃんとした宿のベッドで寝られたのは一度だけでその他の日は野宿。
地上に降りるときはビアンカの隠れられる場所が必要になるため、そのそばにある街というとどうしても限られてしまい、食事もその宿に泊まった一度以外満足には取れていなかった。
それでも最初の3日はまだ良かったのだ。辛かったのは昨日の夜。この山脈から吹き下りてくる風のせいで防寒服を着ていたとは言え眠りに入るまでしばらくの間震えが止まらなかった。
お蔭で今日朝起きてからなんとなく身体の調子が悪い。くしゃみもさっきので何度目だろうか。
ラグはやはりこの寒さに慣れているのか、街で購入した防寒服も私達に比べ大分薄いもので、どんなに冷たい風が吹いても顔色一つ変えていなかった。
と、なかなか返ってこない答えに痺れを切らしたのか、大分苛ついたような低い声でセリーンは続けた。
「おい、聞いているのか? 貴様は慣れているかもしれんが、このままでは」
「お前達はノーヴァで待機していてもらう」
「……ノーヴァ、だと?」
その声にはっきりと怒気がこもる。