My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2
ラグが当然のようにアルディートさんの話をするものだから忘れそうだったけれど、まだ私はあの人のことを何も聞いていないのだ。
「あ? あぁ、そうだ。ストレッタでの、オレの……先輩、みてぇなもんだな」
「やっぱり! なんかストレッタの術士のイメージがガラッと変わっちゃったな」
「あいつはあの中でも相当の変わりもんだ」
「でもアルディートさんはラグのことお気に入りみたいだね。さっきかなり喜んでたし」
私が笑って言うとラグはものすっごく嫌そうな顔をした。
「あいつは勝手にオレを弟分だと思ってんだよ。すぐにガキ扱いしやがって……だからあいつには絶対に知られたくなかったんだ」
「呪いのこと?」
「あぁ」
「ごめんね。でも私、てっきりストレッタの人達は皆ラグの呪いのこと知ってるんだと思ってた」
そう言うとラグは急に眉を寄せ口を噤んでしまい、焦った。
彼に呪いの話は禁句だということを忘れていた。
「ち、違うんだね!」
「……術が思うように使えなくなったってのは皆知ってるが、ガキの姿になっちまうのを知ってるのは上のほんの一部だ」
案外すんなり答えてくれて少し拍子抜けする。
――今なら、まだ詳しい経緯を聞いていないその呪いのことを話してくれるだろうか。
呪いというよりも、エルネストさんについて訊きたい衝動にかられた。
「あの、さ」
「そうだ。一応言っとくが、お前が銀のセイレーンってことアルには言うなよ」
「え? あ、そうだよね。うん」
「とりあえずアルには適当に旅の途中で知り合ったって言っといたからな。話合わせろよ」
「う、うん」
そう立て続けに念を押すように言われ、ちゃんと出来るかどうか不安になってしまった私は結局エルネストさんのことを訊くどころでは無くなってしまった。