My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2
「そういや、お前食欲は?」
「え? あ、あったかいものが食べたいかも」
「さっきセリーンの奴が食堂から何か持ってくるって言ってやがったから、それ食ってまた寝てろ」
「本当に? 嬉しい!」
久しぶりの料理が本当に嬉しくて歓声を上げると、それに合わせるようにまたブゥがくるくると空中を回って私は笑ってしまった。
でもそんなブゥを見ていて私は大変なことを思い出した。
「そうだ! ビアンカは大丈夫かな? あのまんまなんだよね!?」
「さぁな、明日また確認しに行くってセリーンの奴は言ってやがったが」
「大丈夫かなぁ、もし死んじゃったりしたら――え?」
またしても大きな大きな溜息が聞こえて見上げると、心底呆れた様な彼の顔があった。
「今お前は自分の心配だけしてりゃいーんだよ! わかったな!」
「は、はい」
「ストーーーーップ!!」
そんな大声と共に勢いよく部屋のドアが開け放たれびっくりする。
アルディートさんがその場で仁王立ちしていた。
「お、ま、え、なぁ! 可愛い彼女が心配なのはわかるが、怒鳴るとかマジでありえねーし!」
言いながらツカツカとこちらに歩み寄ってくるアルディートさん。
その後ろにセリーンの姿が見えて、私はほっとする。彼女は私と目が合うと優しく微笑んでくれた。
「お前は昔っから女性への接し方がなってないというか。いいか、俺が手本を見せてやる!」
「へ?」
セリーンから視線を戻すと、いつの間にかベッド際に立っていた長身のアルディートさんにぎゅっと手を握られた。
「大丈夫かい、カノン。気がついて本当に良かった。俺は君が心配で心配で、片時もそばを離れずに看ていたんだよ」
「は、はぁ」
「アールーーーー!!」
芝居がかったその台詞に私が生返事をするのと、ラグがまた真っ赤な顔で大声を上げたのはほぼ同時のことだった。