My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2
「改めてよろしく、カノンちゃん。俺のことはアルって呼んでくれな」
そう言って、にっこりと笑ってくれたアルさんに私も笑顔で「はい」と返事をした。
「しっかしラグにこんな可愛い彼女が出来たなんてなぁ」
「だっから、違うって言ってんだろうが!!」
「こんな無愛想な奴だけどこれからもよろしくな、カノンちゃん」
「人の話を聞けぇ!」
二人の会話はまるで漫才のようだった。
(ラグ、完全に子供扱いだよ)
あの嫌そうな顔の意味が良くわかった。
ラグは先ほどから終始顔を真っ赤にして怒鳴っていて、それでも自分のペースを崩さないアルさんは流石ラグと長い付き合いなだけあるのだろう。
(でも私を彼女と勘違いするなんて……あ。ってことはラグ今彼女いないんだ)
ストレッタに彼の帰りを待っているような人がいるのではと以前考えたが、どうやらいないよう。
人のことは言えないが、正直やっぱりと思ってしまった。
(ラグの彼女とか、全然想像出来ないもんなぁ)
私の中でラグは誰とも寄り添おうとしない“一匹狼”のイメージが強い。
だから彼が女の子と仲良くしている姿が全く想像つかなかった。
(その点アルさんは女の子の友達がいっぱいいそうなイメージ。さっきのも、良く考えたら思いっきりナンパだったよね)
と、そのとき、いらついたようにセリーンが声を上げた。
「おい、男は一度部屋から出て行け。カノンが落ち着いて料理を食べられないだろう」
ベッド脇のテーブルにはセリーンが持ってきてくれた料理が置かれていた。
……確かに、皆に食べている姿を見られるというのは少し恥ずかしい。セリーンの心使いに感謝だ。