My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2

「そうだな。ラグ、お前も腹減ってんだろ。ストレッタに戻る前に、まずは腹ごしらえだ。じゃ、またあとでなセリーン、カノンちゃん!」

 アルさんは手を振りながら不機嫌そうなラグとその頭に乗ったブゥと共に部屋を出て行った。
 残ったセリーンは嵐が去ったとばかりにため息をついて、私を振り返った。

「さ、温かいうちに早く食べろ。とても美味かったぞ」
「うん、ありがとう」

 身体を起こし、スープ皿の蓋を開けるとふわっと湯気が広がった。大きな具がたっぷり入ったス―プだ。

「美味しい!」

 それは味も見た目もボルシチにとても良く似ていた。
 ここ何日か料理と言えるものを食べていなかった私は夢中でそれを胃の中に納めていった。体が内側から温まっていくのがわかる。
 幸せを噛みしめているとセリーンがふっと笑った。

「それだけ食欲があれば、じきに良くなるな」
「うん! あ、ねぇ、ラグもまだご飯食べてなかったの?」
「あぁ、さっきもあの男が言っていただろう、ずっとこの部屋でお前を看ていた」
「そう、なんだ」

 とても嬉しかったけれど、ずっと寝ているところを見られていたと思うと少し、いや、かなり恥ずかしかった。

(私、寝言とか、よだれとか大丈夫だったかな……)

 思わず口元を確認してしまう。

「奴も私と同じことを考えていたのかもな」
「え?」
「ひょっとしたら私たちの知り得ない、異世界の病なのでは、と」
「あ……」

 そうだ。私がこのレヴールのことを何も知らないのと同じで、セリーン達にとっても私の住む世界のことは何もわからない。そんな世界から来たという人間がいきなり倒れたりしたら……もし私が逆の立場だったとしたらどうしていいかわからずに困惑するに決まっている。

(ラグも、それで……?)
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