My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2
「私、ずっと、今も自分の国の言葉を話してるつもりで。皆もその言葉を話してるんだとばっかり……」
セリーンも驚いたようだった。
「そうだったのか。……それも、銀のセイレーンの力なのかもしれんな」
「う、うん」
「ちなみに今私が話している言語は私の故郷のものだ。あの男共が先ほど使っていたのがこのレヴールで一番広く使用されている言語。そしてライゼ達フェルク人はまた全く違う言語を使う。私もあまり早いと聞き取れなかったが、カノンはあの親子と普通に会話していたからな」
「…………」
この世界に来てから驚くことばかりだけれど、これは今まで気付いていなかった分かなりの驚きだった。……まぁ、異世界に来てしまったこと自体が一番の驚きではあるのだが。
日本では学校で英語を勉強したくらいで、しかも会話なんて出来るレベルでも無かったのに。
(このレヴールじゃ、私バイリンガルってこと?)
「不思議なものだな。ま、今その理由を考えても仕方ない。さぁ、早く残りも食べてまた横になるといい」
私はまだ少し茫然としながらこくりと頷いたのだった。
それからしばらく横になってウトウトしていると、ラグとアルさんが戻ってきた。
二人はまた漫才のような会話をしながら、これからストレッタへ向かうと言った。
「戻ってくるまでに、治しておけよ」
「うん、ありがとう! ラグも気をつけてね」
私がそう答えると、その視線がセリーンに向かった。
「わかっている。カノンのことは私に任せてさっさと行って来い。で、あの子の姿で早く戻ってこい」
「アホか」
「セリーン、俺もすぐに戻ってくるかんな! 待っててくれよ!」
「…………」
華麗に無視されたアルさんはがっくりと肩を落とし、それを見ていたラグは呆れた顔をしていた。
そして、二人は行ってしまった。勿論ブゥも一緒に。
本当は先ほどセリーンに言ったお礼の言葉をラグにも言いたかったけれど、アルさんの手前言えなかった。
またすぐに会えるのだ。戻ってきたらちゃんと言おう。……そう思っていた。
この時は、まだ――。