My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2

4.グラーヴェ兵


 その夜はゆっくり熟睡することが出来た。
 あの嫌な夢をまた見ずに済んだのは、セリーンが私が寝付くまで傍にいてくれたからかもしれない。

 目が覚めると、いくらか調子が良くなっているのがわかった。
 起き上がっても少し眩暈がしたくらいで昨夜のような激しい頭痛は無い。ほっとして窓の外を見るとまだ薄暗く、だが雪が降っているのが確認出来た。

(今、何時頃だろ)

 ……酷く喉が渇いていた。
 頭痛は無くなったものの、身体の気だるさは残っている。おそらくはまだ微熱程度あるのだろう。

 視線を移すともう一つのベッドでセリーンが静かに寝息を立てていた。
 口には出さないだけでセリーンもきっと疲れているはず。彼女もここまで北国に来るのは初めてだと言っていた。
 起こしてしまうのも悪いと思い、私はこっそりベッドから降り一人で階下にあるという食堂に行くことにした。

 部屋には何の暖房設備も見当たらなかったがなぜかそれほど寒さを感じず、廊下は流石に寒いだろうと覚悟するが、ドアを開けても部屋の中とそう変わらず不思議に思った。
 雪国の建物だ、そういう構造になっているのかもしれない。天井は木組みになっていたが、見ると壁はレンガ造りで、触れてみるとほんのりと温かかった。

(これ、もしかしてペチカ……?)
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