My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2
「何もストレッタまでついて行くとは言っていない」
「エレヴァートは小さな国だ。めんどくせぇことにオレは大抵の場所で顔が知れちまってんだよ。オレがいなきゃお前らはエレヴァートに入れない。だからノーヴァで待機してろって言ってんだ。休みたいんだろ。そこで思う存分ゆっくり休んでりゃいいじゃねーか」
そっけないその言い方に背後の空気が更に不穏なものになった。
セリーンはまだ踏み入れたことのないエレヴァートの地を楽しみにしていたのだ。――主に食べ物を。
エレヴァートへの入国審査は厳しいらしく、誰でもが簡単に入れるわけでないらしい。
(ラグはひょっとして顔パスなのかな)
でも、私は少しほっとしていた。これまで聞いた話でストレッタにはどうしても怖いイメージがあったし、何よりゆっくり休めると聞いて心底嬉しかった。
私は二人が更なる言い合いを始める前にと会話に入る。
「でも、ゆっくりってどのくらいで戻ってこられるの? ビアンカで行くの?」
「や、下手にこいつで近づくと誰に見られるかわからねぇからな、歩いていく。5日もありゃ戻れるだろう」
(ってことは5日間ゆっくり出来るんだ! 思う存分ゆっくりし――)
「ふぇ、くしょぃっ!」
気が緩んだせいかまた大きなくしゃみが出てしまった。と、呆れたようなラグの声が返ってくる。
「お前のくしゃみ、オヤジ臭ぇな」
「しょ、しょうがないじゃん! 出ちゃうんだもん!!」
かーっと顔が熱くなる。