My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2
そう言われたのは確かに初めてではなかった。
でもこればっかりはしょうがない。可愛いくしゃみには憧れるけれど、変えようとしてすぐに変えられるものでもない。おそらくは物心付いたときから私はこのくしゃみなのだから。
「本当にデリカシーの無い男だ。気にすることは無いぞ、カノン。案外そいつのくしゃみはとてつもなく可愛らしいものかもしれんぞ」
「アホか」
と、ラグが足元を見下ろしながら続けた。
「……そろそろだな。おい、もう少し行くと町が見えてくるはずだ。その近くに降りてくれ」
ビアンカに話しかけるラグ。これまでも地上に降りる際は一番頭部に近いラグが彼女に声を掛けていた。
ビアンカはライゼちゃんの言う通りこちらの言うことをちゃんと理解してくれていた。
ちなみに彼女はこれまで何も口にしていなかった。必要ないとライゼちゃんに言われてはいたけれど、元々あまり食事を摂らないのか、それとも私たちの気付かないうちに何かを食べているのか、私たちにはわからなかった。
彼女もここ数日ずっと飛びっぱなしで、きっと相当に疲れているに違いない。
「ビアンカ、もう少し頑張って」
背中を撫でながら言った、次の瞬間。
身体がふわり宙に浮いた。