My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2
6.新たな仲間
風が、私の身体を包んでくれている。
その不思議な感覚に、安心して瞼を閉じ身を任せた。
――彼が来てくれたのだとわかったから。
その間はほんの数秒だったのだろう。
「カノン!!」
次第に治まっていく風音の中聞こえた呼び声にもう一度目を開ける。
そして私は信じられないものを見る。ビアンカに跨り両手を広げている人物、それは――。
「んんーー!!」
口が塞がっているのを忘れて思わずその名を叫んでいた。
私は風に流されるまま彼女の身体に飛び込んだ。それと同時、それまで私を包んでいた風が霧散していくのがわかった。
衝撃はほとんどなかった。私の身体は彼女によって強く包まれていた。その確かな温もりにじんわりと涙が溢れてくる。
ほうと息を吐く音が聞こえて私はばっと顔を上げた。
「んんーんんん!? んんんーんーんんん!?」
「外してやるから少し待ってろ」
苦笑するように言って、彼女の手が私の後頭部に回った。口を塞いでいた布が取り払われ、私はすぐに口内に詰め込まれていた布の塊を足元へ吐き出した。
今まで出来なかった分思いっきり口から息を吸って、声を出す。
「セリーン傷は!? もう大丈――っげほっげほっ!」
二日ぶりに喉が外気に触れたせいか途中で咳込んでしまった。
「落ち着けカノン。私は見ての通りピンピンしている」
「な、なんで……」
その元気そうな声を聞いたらまた感極まって声が詰まってしまった。
だって最後に見た彼女は血をたくさん出して目を虚ろにさせて今にも――。
「てめぇはまた人の心配か!!」
「ラグ!?」
背後から聞こえた幼い怒声に振り向くと、眉間に皺をいっぱいに寄せた少年がこちらを睨み見ていた。
小さな彼のその姿を見て確信する、やはり先ほどの術はラグのものだったのだ。
更にはその手前――。
「よ、カノンちゃん。元気そうで良かった!」
「アルさん! なんで、どういうこと!?」