My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2
そう、あのアルディートさんまでがビアンカに乗っていたのだ。
「カノン、少し大人しくしていろ。腕の方も解くから」
言われて私はハっとする。
「そうだ、フィエールは!?」
「フィエール? あぁ、奴ならあそこだ」
セリーンが私の手枷を外しながら顎でその場所を示してくれた。
その先を見下ろすと確かにアレキサンダーに乗ったフィエールがこちらを見上げただ唖然としているのが見えた。
ビアンカは彼らの真上を大きく旋回しているようだ。
フィエールとの距離を感じて、ようやく自分が助かったのだという実感が湧いてくる。
「こんなに強く縛られて……動くか?」
自由になった腕を上げると、案の定縛られていたところがぐるりと赤く痕になってしまっていた。手を握ったり開いたりするが特に問題はないようだ。
「うん、大丈夫みたい。ありがとう、セリーン」
と、急にセリーンが私の身体を強く抱きしめた。
「セリーン?」
「他に痛いところはないか? さっき殴られたところは平気か? 奴に酷いことをされなかったか?」
質問攻めに合いながら気付く。小さいラグがこんなに傍にいるのに彼女が全く興味を示していないことに。
それほどに心配してくれているのがわかって私は更に嬉しくなった。
「大丈夫。怖かったけど、でも皆が来てくれたからもう大丈夫。……それより皆はどうして」
「カノンちゃん、詳しい話は後でゆっくりな」
すぐ背後でアルさんの声がした。
「で、ラグ。アイツどうすんだ? お前が術使えねぇなら俺がやっちまうか?」
その言葉に私は思わず「え!?」と声を出してしまっていた。
(やっちまうって、殺すってこと!?)