My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2
だがすぐにラグが呆れたように答えた。
「アホか、あの野郎を殺しちまったらランフォルセの奴らが何言い出すかわかったもんじゃねぇ。これ以上ややこしくなってたまるか」
「まぁ、そうだな。セリーンとカノンちゃんに酷ぇことしたあいつをこのまま見逃すってのは癪だが……、しょうがねぇか」
そんな二人の会話を聞いて私はほっと胸を撫で下ろした。
自分自身酷い目に合ったしセリーンを傷付けた憎むべき相手だけれど、やはり目の前で人が殺されるのを見るのは平和な日本育ちの私には強い抵抗があった。
(それに一応、昨日助けてもらってるし……)
「んじゃ、とっとと去りますか」
「あ、ちょっと待って!」
私は重要なことを思い出して皆に言う。
「私、フィエールに言わなきゃいけないことがあるの! ビアンカお願い、少しだけ下に降りてくれる?」
その硬い背中を摩りながら言うと、わかってくれたのかビアンカが下降を始めた。
「わかった、文句を言うんだな! よし、思いっきりぶつけてやれカノンちゃん!!」
アルさんが妙に楽しげにそんなことを言っていたけれど、私は驚いた顔のフィエールに向かって大声で叫んだ。
「フィエール!! 私ストレッタとは何の関係もないし、あなたが思っているような力なんて全然無いから! 王様にもそう伝えてー!!」
聞こえたらしいフィエールが瞬間憤慨したように口を開いたが、ビアンカが近づいたことでアレキサンダーが暴れ出してしまい、そこでフィエールと私の視線は外れた。
――もう二度と、視線を合わせたくはない相手だ。
そしてビアンカはまた上昇する。
ずっと言いたくても言えなかったことが言えて、私はものすごくスッキリしていた。
だがすぐに大きな怒声が飛んでくる。
「んなこと言われて信じる奴がいるかアホォォォーーー!!」
そしてなぜだかアルさんは爆笑し始め、セリーンは私の頭をぽんぽんと軽く叩いたのだった。