My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2
「エルネストさんが!?」
「そ、驚いたなんてもんじゃなかったぜ。いきなり現われて、カノンちゃんが攫われた。セリーンも酷い傷を負ってしまった、だもんな」
酷く久しぶりな気がするビアンカの背の上で、私はすぐ前にいるアルさんの話に耳を傾けていた。
セリーンが深手を負い私がフィエールに連れられ町を出たのとおそらくは同時刻、ラグ達の前にエルネストさんがいつもの如く忽然と姿を現わしたのだという。
その時ラグ達はストレッタに到着したばかりで、でもそれを聞きすぐに引き返して来てくれたのだそうだ。
「戻ったら本当にセリーンは酷ぇ状態で、カノンちゃんはいないだろ~」
「じゃあセリーンは」
「そ、俺とラグの二人がかりでな。でないと本当に危なかったんだぜ」
「……不本意ながらな」
セリーンが私の耳元でぼそっと言った。
彼女は大人の男性が好きではないようだから、きっと二人に借りを作ってしまったことが面白くないのだろう。
こっそり苦笑しながらも、私の頭の中には優しい笑顔が浮かんでいた。
(エルネストさん、本当に見守ってくれてるんだ)
絶望せずに彼のことを信じていて良かった、そう思った。
今、私たちは手近で安全な街を探しながら飛んでいた。
傷が治ったと言ってもまだ酷い貧血状態であるセリーンと、体調がまだ万全でない私が今度こそゆっくりと休める街。
ちなみに今私はセリーンがノーヴァのあの宿から持ってきてくれた防寒具を着込み、更にあのままずっと彼女に後ろから抱きしめられていた。
温かいには温かいのだが、少し気恥ずかしかった。――ラグはいつもこんな気持ちなのだろうか。