My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2
私が落ち着いた今、彼女の視線はアルさんの向こうの小さな背中に釘付けで、すぐにでも飛びつきたいのを我慢しているように思えた。
(ビアンカに乗ってなかったら、アルさんを撥ね退けて行ってるよね、きっと)
そんなセリーンと嫌がるラグの姿が瞬時に頭に浮かび、小さく笑みがこぼれた。
「その後すぐにでもカノンちゃんを追いたかったんだけど、俺も飛びっぱなしで結構限界でさ」
「あ、それでビアンカを? でもどうやって……」
「お前が冬眠じゃないかと言っていたことを思い出してな。それならば暖めれば目を覚ますのではと考えたんだ」
ビアンカはあのままずっとあの場所で眠っていたのだそうだ。
そしてノーヴァから持って行った松明の火と術を使ってその場を暖めたのだと言う。
セリーンの傷を治したことと言い、改めて術というものは万能で便利なものだと、思わず感嘆のため息が漏れていた。
「少し時間は掛かってしまったが、起きてくれてな。事情を話したらすぐに飛んでくれた」
「そうだったんだ……。ビアンカも、ありがとうね」
お礼を言って背中を撫でる。
初めて乗った時、心もとなくて怖かったビアンカの背中。でもアレキサンダーの乗り心地を知ってしまった今ビアンカの背中はまさに快適な飛行機に乗っているかのようだった。
「本当は昨日のうちに追いつけるはずだったのだが、一度追い抜いてしまったらしくてな」
「そうだったの?」
「あぁ、街道を辿って行ったのだがな。街道を外れて走っていたのか?」
「ううん。ずっとあの道を走ってたよ。あ、でも昨日川で休憩とったり、山小屋で寝たりしたから――」
「何!?」
「何だって!?」
突然、セリーンとアルさんが酷く驚いた様子でこちらを見てきた。