My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2
「え?」
「山小屋で寝たって、あいつも一緒にってことだろ!?」
「え? あ、で、でも私寝たっていうか気を失ってたみたいだから、向こうはずっと起きてたのかも」
「それでは何かされていてもわからないではないか!!」
凄い剣幕で言われて初めてその意味を理解した私は焦って言う。
「何もされてないよ!! た、ただ私の身体をあっためてくれて」
「あっためてくれただと!?」
「あっためてくれただって!?」
ほぼ同時に大声を張り上げた二人に私は慌てて付け加える。
「防寒服を貸してくれて、火を焚いてくれたの!!」
「そ、そういうことか」
「ふぅー、焦ったぜ」
またも同時に息をついた二人に、私もほっと胸を撫で下ろした。妙な誤解をされたくはない。
「だがカノン、お前は気を失っていたのだろう?」
「本当に大丈夫だってば! だってあの人、私のこと銀のセイレーンだからって化け物扱いしてたし……っ!」
私は自分の失言に気づき咄嗟に口を塞いだ。だがすでに遅い。
アルさんが目の前にいるのに銀のセイレーンのことを口に出してしまった! ――でも、
「あぁ、もう知ってるよ。カノンちゃんが銀のセイレーンだってこと」
にっこり笑顔でそう言われ、私はなんだか拍子抜けしてしまった。
アルさんがラグを指差しながら続ける。
「こいつが昨日全部話してくれてさ。まぁ、俺が頼んだんだけど。でも驚いたなぁ、カノンちゃんがあの伝説の銀のセイレーンだなんてなぁ」
「あ……、すいません。なんか、あはは」
例の伝説のことを思い出し、私は空笑いしながら言う。すると。
「えー、なんで謝んの? カノンちゃんの歌、俺聴いてみたいなぁ」
屈託のない笑顔でそう言われて、私は目を見開く。