My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2
「オレ達が間に合ったから良かったものの、あの野郎に殺られてたかもしれねぇんだぞ!?」
「で、でも、私には歌しかないって思ったから……」
「使いこなせてもいねぇくせに生意気なこと言ってんじゃねぇ!」
「おいおい、ラグ」
私が何も言えなくなってしまったのを見兼ねてか、間にいるアルさんがラグに声をかけてくれた。
「てめぇは黙ってろアル! いつも言ってるけどな、お前が死ぬとこっちが困るんだよ!」
「わ、わかってるよ!」
「わかってねぇ!!」
「てりゃ」
突如、アルさんのチョップがラグの脳天を直撃した。
「いってぇ! 何しやがんだ!!」
「いや、丁度頭が叩きやすい位置にあったもんでさ」
「はぁ!?」
「なんて冗談はさておき、お前なぁ。そんなんだからいつまでたっても彼女出来ないんだぞ?」
「!? か、関係ねぇだろうがぁ!!」
少年の顔にさっと赤みが差す。
私も何で今そんな、それこそ冗談のような話になったのかわからなくて呆然と前の2人を見つめていた。
と、アルさんが困ったような笑顔でこちらを振り返り、そのまま小声で私に言う。
「カノンちゃんごめんね~、こいつホントに素直じゃなくてさ。カノンちゃんのことが心配で心配で昨日からずーっとイライラしててよ、ホントは今嬉しくてしょーがないんだぜ。だから許してやってくれな」
最後にウインクまでしてくれたアルさんに、私は咄嗟に生返事しか出来なかった。
……失礼な話だけれど、アルさんの言葉はどうも軽くて、正直どこまで本気にしていいのかわからなかった。
(どう見ても、嬉しくてしょうがないってふうには見えないし……)
「おいてめぇアル! 今何言いやがった!?」
「別に何も~」
飄飄と前に向き直ったアルさんにラグはまだ何か言おうとしたが、諦めたのか大きく舌打ちして背を向けてしまった。