My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2
「へ?」
私の小さな疑問の声と二人の焦ったような声とが重なる。
視界がずれ、その浮遊感はすぐに落下感へと変わる。
そのとき腰を強く押さえつけられ、セリーンが私の背中に覆いかぶさってきた。
「大丈夫か!?」
耳の奥が痛い。顔面を襲ってくる凄まじい風のせいで目を開けていられない。
何が起きたのか、いや起きているのか状況が全くわからなかった。
「――なっ、なに、が」
「わからない、ビアンカがいきなり急降下を始めた。とにかくしっかり掴まっているんだ!」
耳元で聞こえたセリーンの大声に、私は無我夢中でビアンカの身体にしがみついた。
「くっ、このまま地面に激突する気か!?」
「カノン、歌え!!」
そのとき聞こえてきたまさかの命令に私は有らん限りの大声で答える。
「無理ーーーー!!」
「くそ! ――すまない、少し力を貸してくれ」
この場に似合わない優しげな声音が強風と共に耳に届く。
「風を此処に……!!」
途端、再び胃が持ち上げられるような浮遊感が全身を襲った。
ラグの術で落下が止まったのだとわかり恐る恐る目を開ければすでに目の前に雪を被った木々が迫っていて、着地の衝撃に備え私はまた強くビアンカに抱きつきぎゅっと目を瞑った。
木々をなぎ倒していく派手な音の後、思ったよりも静かにビアンカは地上に着地した。